moxi

moxiフラクショナルレーザーの導入と臨床適応
勇内山大介
代々木美容皮膚科　院長
東京医科大学放射線医学分野非常勤講師

【はじめに】
常に進化を続ける美容皮膚診療の世界では、最新の知識・知見を常に把握しておくことが非常に重要です。臨床経験も大切ですが、科学的手法によって書かれた論文を日々調べ、読み、書くことも重要です。代々木美容皮膚科の院長、勇内山は医師になってから論文を読み、書き続けてきました。そんな院長が今回導入をしたmoxi(モキシー)レーザーをご紹介いたします。moxiは非常に画期的な非蒸散型フラクショナルレーザーであり、この最先端技術は様々な肌の悩みに対処できることで話題を呼んでおり、代々木美容皮膚科では東日本で初めてmoxiを導入いたしました。moxiの素晴らしさと、それが皆様のお肌にどのような効果をもたらすのかをご説明いたします。

【moxiとは】
moxiは皮膚の若返りに顕著な効果があることから人気が高まっている1927nm波長の非蒸散型フラクショナルツリウムレーザーです。
非蒸散型フラクショナルレーザーと言えばアレキサンドライトやYAGによるピコフラクショナルレーザーが社会一般では受け入れられており、ルビーフラクショナルレーザーも市場に出回っています。ところがピコフラクショナルレーザーでは皮膚内での治療範囲が狭いこと、表皮と真皮のどちらを狙って治療できないため仕上がりが安定しないことが問題となっていました(1,2)。ルビーフラクショナルレーザーに関しては病理学的な検討を行った論文はなく、ダウンタイムの大きさから、ピコフラクショナルより強い治療効果を想定するのみでした。
またツリウムレーザーも販売実績はありますが、従来のツリウムレーザー機器では一定の治療効果を発揮することが難しく、治療不十分、過剰治療によるやけどを伴うことが多かったため話題を呼ぶことはありませんでした(3)。病理学的にも治療効果が安定しないことが課題でした(3)。
この問題点を改善したのがmoxiです。moxiは皮膚の表皮と真皮の移行部を正確にターゲットとし、身体の自然治癒プロセスを刺激する微小な損傷を作り出すことができます。また皮膚の熱を検出しながらレーザー照射を行うという画期的な技術により、均一な治療効果を発揮することが出来るようになりました。結果的に、よりハリのある、なめらかな、若々しいお肌になることを目指します。
以下にフラクショナルレーザーの種類と特徴をまとめた表を示します。リジュビネーションを目的とした場合、moxiが非常に優れたフラクショナルレーザーであることが分かります。


【moxiとニキビ跡、しわ、毛穴、しみ、くすみ】
年齢を重ねるにつれて、皮膚のコラーゲンとエラスチンが失われ、小じわが形成されます。moxiのフラクショナルレーザー技術は、コラーゲンの生成を刺激し、肌の弾力性を高めます。質の高い前向き研究によって小じわやニキビ跡、毛穴の改善を行うことが証明されています(4)。moxiではその効率の高い治療方式により、より高い効果が期待できます。

【moxiと炎症性ニキビ】
1927nmの従来型のツリウムレーザーによって活動性のニキビの改善が見込めるという報告があります(5)。
moxiではより均一な治療効果をが得られるため、より高い効果を期待できます。

【moxiと炎症後色素沈着(Post Inflammatory Hyperpigmentation：PIH)】
PIHの治療の基本は“保存療法”といわれ、何も刺激を与えないことが最適であると考えられており、トラネキサム酸の内服、塗布、イオン導入、ビタミンC内服や点滴が数少ない追加オプションでした。しかし、1927nmのレーザーによってPIHの治療を行うことが可能であると報告されています(6)。moxiではその治療効果の均一性より、より高い効果を得られる可能性があります。

【moxiと肝斑】
肝斑は慢性的な皮膚への刺激やホルモンバランスの異常によって誘発されるメラノサイトの異常活動の結果生じる色素沈着です。肌をこすらないように気をつけていただくこと、トラネキサム酸の内服でかなり改善しますが、それでも管理が難しい場合があります。 ツリウムレーザーでは、メラノサイトの活動を亢進させることなく、肝斑に対して過剰な色素沈着を分解して肌の色調を均一にすることが報告されています(7)。一般にお肌への刺激によってメラノサイトの活動を亢進させますが、moxiでは優れた熱検出技術により、その危険性を大幅に減らす可能性があります。

【起こりうる副作用・合併症】
麻酔薬アレルギー、治療中の痛み(チクチクする感覚)、治療後のひりつき(2時間程度で消失)、赤み(治療終了後～48時間)、シミやレーザー跡の黒化(24時間後～皮むけ終了まで)、皮むけ(3日後～5日後)、稀に毛包炎

【moxiを受けて1週間経つと】
毎朝目覚めてお鏡を見た時、肌の見た目も感触も最高なあなたで一日を迎えることを想像してみてください。moxiによる治療は肌の悩みを改善し、ご自身の自信を取り戻す可能性があります。

【BBL Hero + moxi：STAXトリートメント】
moxiはご好評のBBL Heroのプラットフォームであるmjouleに搭載されるレーザーであることが大きな特徴であり、両者の同時治療によって治療効果が相乗されます。BBL Hero単独、moxi単独と比べ、両者を掛け合わせたSTAXトリートメントでは、より早く効果をご実感頂くことができます。
STAXトリートメントを行った1例をご紹介いたします。
40歳男性、両目尻にシミと肝斑、左目尻にPIHがある症例で、STAXトリートメント治療前と治療後1週間の画像をお示しいたします。
たった1回の治療で、お悩みであった局所の色味に加え、お顔全体のトーンアップが得られています。


【おわりに】
様々な肌の悩みに対する解決策を求める人々にとって、moxiはまさに希望の光と言える画期的な非蒸散型フラクショナルレーザーです。光老化によるシミ、くすみ、赤み、しわ、たるみ、ニキビによるニキビ跡や毛穴の開きまで、moxiでは目に見える結果をもたらします。
皆様のご予約をお待ちしております。

References
1. Emil et al. The histology of skin treated with a picosecond alexandrite laser and a fractional lens array. Lasers in Surgery and Medicine. 2016;48(7):646-652
2. CHung et al. Pattern analysis of 532- and 1064-nm microlens array-type, picosecond-domain laser-induced tissue reactions in ex vivo human skin. Lasers in Medical Science. 2019;34(6):1207-1215
3. Kwon et al. Histologic analyses on the response of the skin to 1,927-nm fractional thulium fiber laser treatment. Journal of Cosmetic and Laser Therapy. 2017;20(1):12–16.
4. Vingan et al. Investigating the efficacy of a fractionated 1927 nm laser for diffuse dyspigmentation and actinic changes. 2023;55:344-358
5. Chun SI. A Novel Treatment of Acne Vulgaris Using a 1927 nm Fractional Thulium Laser: A Case Series. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2024 Aug 27;17:1931-1942
6. Bae et al. Treatment of post-inflammatory hyperpigmentation in patients with darker skin types using a low energy 1927 nm non-ablative fractional laser: A retrospective photographic review analysis. Lasers in Surgery and medicine 2020;52:7-12
7. Rho et al. Treatment of melasma using a novel 1927 nm fractional thulium lase: A retrospective analysis of 68 Korean patients. Med Laser 2017;6(1):10-16