代々木美容皮膚科ニキビ治療

代々木美容皮膚科のニキビ治療
文責　代々木美容皮膚科　院長　勇内山大介
2025年11月10日更新

はじめに
・ニキビはCutibacterium acnes(以下C.acnes)という常在菌による皮膚の炎症性疾患
・皮脂×角化×菌と血管反応が絡む多因子疾患で、再発に悩む方が非常に多い
・保険診療抵抗性のニキビに対する当院での治療をご紹介

① ニキビとは
ニキビはC.acnesという常在菌によって生じる皮膚の炎症性疾患です。毛穴のつまりから始まり、白ニキビや黒ニキビを形成し、炎症をきたすと赤ニキビ、黄ニキビとなります。沈静化すればいいのですが、長く炎症を患うと炎症後色素沈着(post-inflammatory hyperpigmentation: PIH)や瘢痕を形成する場合があります。PIHや瘢痕を残さないためにも様々な段階のニキビに対して適切に対応する必要があります。
保険診療が治療の基本ではありますが、保険診療抵抗性のニキビに対して、当院では自由診療をご提供しています。
ニキビの原因と悪化の要因、当院での治療介入方法についてご説明いたします。

②ニキビを発生・悪化させる３つの原因
1) 皮脂腺の活性化と皮脂腺産物の増加
思春期〜若年成人ではアンドロゲンやinsulin-like growth factor-1(IGF 1)の影響で皮脂腺が肥大・活性化し、分泌量の増加に加えて遊離脂肪酸やスクアレン酸化などの質的変化が炎症惹起性を高め、面皰形成を助長します(1)。皮脂は単なる「油」ではなく、微生物叢への選択圧・角化の調律・免疫反応に関与する情報分子でもあります(1, 2)。
2) 毛包漏斗部の角化亢進と皮脂排泄障害
毛包漏斗部の角化異常により微小面皰（マイクロコメド）が形成され、皮脂の外排出が滞ります。外用レチノイドは微小面皰の解消・再形成抑制により「詰まり」をほどく基盤治療としてガイドラインでも中核に位置づけられます(3)。
3) 皮脂による閉塞空間の形成とC. acnesの増生
閉塞下の嫌気環境ではC. acnesが増殖し、ポルフィリン産生やバイオフィルム形成が炎症の慢性化と再燃に関与します(2)。

③ VISIA evolutionを用いた肌診断
VISIA evolutionのポルフィリンスコアはC. acnes由来ポルフィリン赤いスポットとして可視化し、更に1万2千人のアジア人の同性同年代の方と比べて相対的に多いか少ないかをスコア化します。また赤みスコアは炎症性紅斑（post-inflammatory erythema: PIE）のホットスポットを示します。毛穴スコアは角化・開大毛孔の指標となり、画像を拡大することで毛穴を細かく観察することでお肌の状態を判断する材料になります。当院では毎回VISIA evolutionにてお肌の状態を観察し、治療介入後の各スコアの変化や毛穴の形態の変化を観察しながら治療を進めていきます。

④各種デバイスによる治療方法
1)CO₂レーザーによる面皰・膿疱排膿
閉鎖性コメドや反復膿疱の排泄ルートを最小侵襲で確保し、角化による閉塞と嫌気環境を同時に緩めます。密集面皰を対象に、スーパーパルスCO₂とコメドエクストラクターを左右分割で比較した評価者盲検無作為化試験(randomized control trial: RCT)では、4回終了時の面皰減少率がCO₂ 64.5% vs エクストラクター46.4%（P<.001）、50%以上改善は79.2% vs 37.5%、痛みスコアはCO₂が低値、ポルフィリン指数／赤色領域／経表皮水分蒸散量(trans epidermal water loss: TEWL)もCO₂側でより改善し、重篤な有害事象は認められませんでした(4)。
従来の「穿刺＋圧出」は、閉鎖性コメドに21G針で小切開を入れてから抽出、嚢腫性病変では切開排膿が標準手技として報告されています(5)。CO₂微小穿孔は穿孔と止血・熱的殺菌を同時に行え、視野確保と整容性に利点があり、皮膚付属器嚢腫のCO₂微小孔法でも治療満足度・瘢痕の小ささが報告されています(6)。ニキビ病変での“針vs CO₂”直接比較したRCTは限定的ですが、上記RCTの客観指標と嚢腫での整容性データから、適切な症例選択下ではCO₂微小穿孔の臨床的優位が妥当と考えられ、弊院でも導入しています。

2) BBLによる炎症性丘疹の治療
ⅰ) 420 nmフィルターによる光化学的殺菌
C. acnesの内因性ポルフィリンは400–430 nmで励起され、活性酸素を介して菌体障害を起こします。無作為化試験や系統的レビューで炎症性病変数の有意減少が示されています(7, 8)。BBLの420 nmフィルターはこの帯域を広く均一にカバーしており、炎症の活動性を軽減させます(7, 8)。
ⅱ) 532 nmフィルターによるForever Young BBLモードでの赤み治療＋熱形成
酸化ヘモグロビンに吸収が高い532 nmフィルターは選択的光熱作用でPIEや表在性毛細血管を縮退・再構築し、赤みを鎮めます(9, 10)。またBBL HEROの532nmフィルターでは500-650nmの広範な波長を有しており、効率的にクロモファーに作用します。熱形成は副次的に菌環境へも影響し得ますが、直接の殺菌主役は420 nmです(10)。さらにForever Young BBLは加齢皮膚の遺伝子発現を若年様に近づけた所見があり、炎症後の質感・色むら是正の中長期維持に寄与します(11)。
ⅲ) 800nm近赤外線によるスキンタイトニングでの真皮の地ならし
近赤外の容積加温によってヒートショックプロテイン生成を行い、線維芽細胞活性化・コラーゲン再配列を促し、毛穴の形態を是正します。光若返りの組織学的改善が示されており(12)、上腕への赤外線デバイスによるスキンタイトニングでも支持的データがあります(13)。赤み治療後にスキンタイトニングを重ねると、色・形・質感の3要素がそろって整います。スキンタイトニングはニキビ治療としては非常に珍しい治療です。10年近くニキビに悩まされた困難な症例を対象にBBLによる殺菌、赤み治療、スキンタイトニングの3ステップによる治療を行ったところ、治療後6ヶ月以上もきれいな状態が続き、ニキビ跡の減少率は90%と報告されています(14)。著者は100人以上の患者をこのプロトコールで治療し、約80%の患者が炎症性ニキビの症状を完全に治すか、少なくとも75%の改善を達成したと報告しています。ニキビの改善は治療後2～3日で現れ始め、1～2年未満の赤み、紫色、隆起、陥没したニキビ跡は、治療後1～3週間で薄れ始めるとも報告されています。

3)レーザーによるニキビ治療
ⅰ) レーザーフェイシャル（GentleMax Pro Plus：755 nmアレキサンドライトレーザー）
当院設定（20mm/12 J/2msスタート）は“積極的加熱域”の高フルエンスで、PIE/PIHが混在するトーンの不均一・微小血管・表皮メラニン・うぶ毛に同時多発的に働きかける設計です。ロングパルス755 nmアレキサンドライトはメラニンと浅層血管に対する選択的光熱分解（selective photothermolysis: SPTL）を基盤とし、トーンの均一化/赤みの目立ちの軽減/キメ改善に寄与します(16)。当院の設定はフェイシャル治療としては強めのため、動的冷却装置(dynamic cooling device: DCD)・皮膚タイプ別の設定・前処置（レチノイド休薬・日焼け管理）を厳守し、びまん性紅斑や軽度毛包周囲浮腫を臨床エンドポイントとして運用いたします。なお、毛包単位への熱影響が皮脂の排泄路の整流化に寄与し得る可能性はありますが、角化制御の中核は外用レチノイドで担保いたします(3, 15)。

ⅱ) ジェネシス治療（GentleMax Pro Plus：1064 nm Nd:YAGレーザー）
方法：7Hzの中空照射で真皮浅層を均一に加温し、温感と軽度紅斑をエンドポイントとする治療です。
有効性：二重盲検RCTにて650 µs・1064 nm Nd:YAGは観察者による見た目の変化(Investigator's Global Assessment Scale: IGA) 26% vs 7%（対照）、炎症性病変 −42% vs −26%、皮脂 −18% vs −9%、ポルフィリンスコア低下などの優越性を示しました(16)。機序はヘモグロビン選択加熱による栄養血管制御と皮脂腺機能の軽度抑制・炎症低減の複合です。

4) ニキビ瘢痕治療
ⅰ) 瘢痕の種類と治療方法
萎縮性瘢痕はアイスピック、ローリング、ボックスカーの3型に大別され、牽引索の有無や真皮コラーゲン欠損の深さで治療選択が変わります。評価にはGoodman & Baronのグレーディングや視触診を併用し、病型・重症度を判断します(17-19)。萎縮性ではアイスピックにTCAクロス、ローリングにサブシジョンが基本手技で、面の粗さ・浅いボックスカーには非蒸散性フラクショナル（non-ablative fractional laser: NAFL; 1550/1565/1927 nm）で真皮リモデリングを重ねるのが合理的と考えられています(20-22)。
ⅱ) moxi（1927 nm Thulium NAFL）の役割
moxiはツリウムを励起して得られる1927 nm波長のレーザーで、NAFLに位置づけられます。1927nmのレーザーは水に吸収されることによって表皮〜乳頭真皮に微小熱損傷ゾーン（microthermal zones: MTZ）を形成し、PIHや表層色素、浅い凹凸を同時に整えるのが得意です。ダウンタイムが短いため、普通に生活を送りながら治療を受けて頂くことができ、PIHリスク管理を重視する日本人肌にも適合しやすい特性があります(23,24,26)。萎縮性瘢痕を対象としたsplit face前向き試験では、1927 nm Thulium NAFLは2940 nmの蒸散型Er:YAGレーザーと同等の瘢痕スコア改善（約35–37%）を示し、忍容性良好でした(23)。また1927 nm＋30%サリチル酸の分割顔試験では、活動性ニキビと瘢痕の双方で有意改善が報告されており、炎症・色・浅層凹凸を同時に治療できる点が強みです(24)。1550/1927 nmデュアルレーザーの報告でも、萎縮性瘢痕に対するNAFL中核の立場を支持しています(25)。
ⅲ) ジェネシス（1064 nm microsecond Nd:YAG）の役割
ジェネシスは真皮容積加熱（約40℃台）による血管反応の安定化と軽度リモデリングに優れ、PIEや肌のキメ感の微調整でその力を発揮します。ただしMTZを刻む機序ではないため、凹み体積の縮小はNAFLに比べ穏やかになりやすいと報告されています(17, 26)。凹凸の主訴が強い場合はmoxi優先、赤みの残存が強く、浅い質感調整が目的ならジェネシス併用が適切です(17, 23, 24)。
② 皮膚タイプIII–Vにおける安全性
NAFLは皮膚色の濃い患者でも色素異常のリスクが相対的に低く、適切なパラメータ設計で安全に運用できるとするレビューがあります(27)。PIH/くすみ＋浅い凹凸の混在例が多い日本人肌では、moxi（1927 nm）を一次選択に置き、PIEが前景の症例でジェネシスを橋渡しに用いる構成が合理的と考えられます。

5) 代々木美容皮膚科カスタマイズ治療
ニキビは皮脂×角化×菌と血管反応が絡む多因子です。VISIA evolutionの結果を元に「毛穴の詰まりを改善する」×「菌を減らす」×「赤みを静める」×「土台を整える」×「色・質感・うぶ毛を仕上げる」を同日に安全域で層状配置し、短期の視認改善と中長期の再発抑制を両立させます。BBLの420 nmフィルター(殺菌)と532 nmフィルター（赤み）、800nmフィルター(スキンタイトニング)、レーザーフェイシャルもしくはジェネシスを部位によって当て分けます。単一治療に依存しない、病態に応じた同日多面的介入により、迅速な治療アウトカムを目指します。

本稿のまとめ
ニキビの病態と、病態に応じた当院での治療介入方法をご紹介させていただきました。保険診療抵抗性のニキビにお悩みでしたら、是非一度カウンセリングにお越しいただければと思います。

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